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ドえすの株日記 (感謝してます)

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20話「希望と愚行」

20話「希望と愚行」

ことここに至り、流石にオオギも気付く。異常こそ正常だと。
このワシズ麻雀の特殊ルール、命懸けのマージャンだということ自体がそもそも常軌を逸している。
ならば、この異様な世界では、異常こそ正常。正しい感性なのだ。
このことをアカギは最初からわかっていたんだ。このワシズ麻雀は、どうあれ、命懸けの麻雀。極限の精神状態で打ち続けなければならない麻雀。その集中力の持続こそ、生き残りの生命線であることを。つまり、血液補給などして、これでマンガンを打ち込んでも安心、そんな考えを、チラリとでも芽生えさせること。これこそ大ズレ。誤っている。その考えはつまり状況打ち。状況によって打ち方を変えるという発想。マンガンを打っても生き残るから、ちょっと危ないけど打とう、そんな考え、通常、それは当然の打ち回しだが、このワシズ麻雀では、恐らく、ヌルイ(温い)。
それはしてはならない発想。
その考えはつまり、究極のところ、振り込んでもいいということ。
となれば、あらゆる場面で100%読み切ろうと言う気迫は薄れ、行けるかどうか、濃い薄いで相手の手を読むことになる。
読みも覚悟もボケてくる。
そんな麻雀では、肝心なところで見誤る。
思考に、あってはならない不純物が入る。
つまり、
恐れが。
その進入を許してはダメだ。
一瞬でも緩めば、それは入ってくる。
恐れに、食い殺される。
そのことを俺は重々理解しているつもりだったが、アカギに比べれば、遥かに足りなかった。理解していれば、血液補給などという甘っちょろいことをそもそも考えない。
なぜなら、そういう安全を追う心が、そもそも癌で、心の気圧を下げる行為なのだ。
安全を追う、安全が増せば、必ず心はホッとする。
それは、心のメカニズムだ。仕方ない。
しかし、このホッとするというのが、良くねぇ。
事実俺は、アカギが勝てそうだとホッとした分、この危機に激しく同様、オタオタしている。こんな揺れた心で、確りとした読みが出来るわけが無い。冷静な対処が出来るはずが無い。
ダメなんだ。一瞬でも気を緩めたら。
アカギはその点を俺より遥かに熟知している。
救いだ。おたおたしないアカギが救い。
この状況下で微動だにしない冷静さが救い。
たぶん今アカギは濃い薄いという読みはしていない。
ゼロか百かという考えで打っているはず。


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